「技術・人文知識・国際業務」(略称で「ぎじんこく」と呼ばれます)とは、就労系在留資格のひとつです。大卒等の者がそれぞれの専攻分野を生かした仕事に就くのに取得する在留資格で、就労系在留資格の中でも特に多く利用されています。
まずはそれぞれの意味についてです。
技術
理学や工学などの主に理系分野を専攻した人が就く業務のことです。たとえばプログラマーやシステムエンジニア、CADオペレーター、機械工学系の技術者、建築・土木の設計者など、理系ならではの技術を生かした開発系の仕事が中心となります。
人文知識
法学や経済学など主に文系分野を専攻した人向けの業務のことです。たとえば法律事務所でのパラリーガル、マーケティング、広報、経営コンサルタントといった業種です。
国際業務
外国人ならではの強みや文化を生かした業務のことで、民間語学教師や通訳・翻訳などが挙げられます。他にも外国文化を基にした服飾や広告などのデザイナーも国際業務に含まれます。
技人国の要件
技人国は大学等での専攻分野と就職先の業務内容が密接に関係するため、学歴要件が重視されています。
その他の要件について見ていきます。
学歴要件
原則として次の3パターンどれかに該当しなければなりません。
・本国の大学・短大・大学院を卒業(学士または短期大学士以上の学位を取得)
・日本の大学・短大・大学院を卒業(学士または短期大学士以上の学位を取得)
・日本の専門学校を卒業(専門士の称号を取得) ※ 外国の専門学校は対象となりません
また上記学歴でなくても、技人国の対象となる二つの特例があります。
二つの特例
・一定以上の実務経験:「技術・人文知識」の仕事に就く場合は10年以上、「国際業務」の仕事なら3年以上の実務経験を証明することで、技人国の申請が可能となります。
・情報処理技術資格の所有:日本の「情報処理安全確保支援士試験」や「情報処理技術者試験」をはじめ、中国、フィリピン、ベトナム、ミャンマー、台湾、マレーシア、タイ、モンゴル、バングラデシュ、シンガポール、韓国の各国でそれぞれ実施される情報処理技術系資格を取得すれば、技人国の申請要件を満たすことができます。
その他要件
学歴要件以外の要件は6つです。
➀ 学歴と職務内容が関連していること
大学等で学んだ内容と日本で就く仕事が密接に関連していることが求められます。専門分野と業務内容が一致しない場合、技人国の在留資格は許可されません。
・不許可事例
声優学科を卒業後、外国人客が多く訪れるホテルに入社、ロビースタッフとして翻訳・通訳業務に従事するため在留許可を申請
→ 専攻科目との関連性が認められないため不許可
② 業務に専門性があること
業務内容に専門性があることとは、専門知識や専門技術を必要としない単純作業の場合、許可されません。
・不許可事例
教育学部を卒業後、弁当の製造・販売業務を行っている企業に入社、現場作業員として弁当の箱詰め作業に従事するため在留許可を申請
→ 人文科学分野の知識を必要とすると認められないため不許可
③ 日本人と同等以上の報酬であること
業務内容が同じなら外国人にも日本人同等以上の報酬を支払う必要があります。(申請時に提出する雇用契約書等で確認)
・不許可事例
翻訳学科を卒業後、輸出入業を営む企業に入社、月17万円の報酬にて海外企業との翻訳業務通訳に従事するため在留許可を申請
→ 同時に採用された同種の業務に従事する日本人の報酬が月20万円だった。日本人と同等額以上の報酬を受けていないので不許可
④ 勤務先の経営状態が安定していること
外国人を雇用する企業にはちんと報酬を支払える程度の経営状態が求められます。(申請時に提出する財務諸表等で確認)
設立直後の法人や中小企業は、より詳細な審査を受けます。
⑤ 外国人雇用の必要性
専門技術を持つ外国人を雇う以上、一定の規模や業務内容がきちんとあるはずです。少人数の会社で労務管理専門の外国人を雇ったり、外国人顧客がほとんどいないのに通訳として外国人を雇うなどは許可は受けられません。
・不許可事例
情報システム工学科を卒業後に料理店経営を行う企業に入社、月25万円の報酬でコンピューターでの会計管理や労務管理などの業務に従事するため在留許可を申請
→ 従業員10名ほどの規模であったため、雇用の必要性があるとはいえず不許可
⑥ 素行が不良でないこと
犯罪行為での処罰歴がないかどうか、納税義務を果たしているか、在留許可に従って行動しているか等です。
・不許可の具体例
商学部を卒業後に貿易業務・海外業務を行っている企業に入社、海外取引業務に従事するため在留許可を申請
→ 留学在留資格で在留中、1年以上継続し月200時間以上アルバイトをしていたことが判明し不許可
※留学生の資格外活動(アルバイト)は1週間あたり28時間以内でなければなりません
技人国の申請方法
技人国の申請手続きは、就職先企業・団体の規模などによって「カテゴリー1」〜「カテゴリー4」に分けられています。カテゴリー毎の必要書類と申請の流れについてご案内します。
必要書類
【すべてのカテゴリーに共通】
➀ 在留資格認定証明書交付申請書
② 写真(縦4cm×横3cm)
③ 返信用封筒
④ いずれかのカテゴリーに該当することを証明する文書
⑤ (専門学校の卒業生)専門士又は高度専門士の称号を付与されたことを証明する文書
【カテゴリー3・4に共通】
⑥ 活動内容等を明らかにする資料
⑦ 学歴・職歴その他経歴等を証明する文書
⑧ 登記事項証明書
⑨ 事業内容を明らかにする資料
【カテゴリー3のみ】
⑩ 直近年度の決算文書の写し
【カテゴリー4のみ】
⑪ 直近年度の決算文書の写しまたは事業計画書(新規事業の場合)
⑫ 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出できない理由を明らかにする資料
審査期間
平均処理期間は新規申請で約50日、変更申請で約40日程度と言われますが、実際には1週間程度から半年以上と非常に幅があります。一般的には大企業ほど審査期間が短くなる傾向があります。
技人国での在留期間
技人国での在留期間は3か月・1年・3年・5年のいずれかです。
ほとんどの場合、新規申請時の在留期間は1年であり、在留資格更新を繰返すうちに3年や5年に延びていくのが一般的です。なお更新に上限はありません。
日本で働く外国人の大部分が利用している最も一般的な在留資格ですが、審査は厳格です。申請取次行政書士などのプロに相談して間違いのない手続きをおすすめします。